超音波カメラの核心技術:音源位置特定とビームフォーミングの仕組みを徹底解説

産業設備の予知保全から環境モニタリングまで、幅広い分野で注目を集める超音波カメラ。この革新的なツールは、人間の耳には聞こえない超音波領域の音を「可視化」することで、エアリーク、ガスリークや部分放電、機械の異常を早期発見します。

本記事では、超音波カメラの中核をなすセンサーアレイとビームフォーミングアルゴリズムの動作原理、特に広く普及しているDelay & Sum (DAS)方式、そしてそれらがどのように音源位置特定とビームパワーの生成に寄与するのかを、技術的視点から詳細に掘り下げて解説します。

超音波カメラの基本構造:MEMSマイクアレイが音を捉える仕組み

センサーアレイ:空間音響情報の「目」

超音波カメラの心臓部は、MEMS(Microelectromechanical Systems)マイクを多数配置したセンサーアレイです。

各MEMSセンサへの音の到達時間差(TDoA)こそが音源の方向に関する重要な空間情報を含んでおり、各マイクで捕捉されたアナログ信号は高速サンプリングとA/D変換を経てデジタルデータに変換され、後続の信号処理に引き渡されます。

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マイク1(Mic1)とマイク2(Mic2)に音波到達の時間差(TDoA)が生じる

ビームフォーミング技術:音源への「フォーカス」を実現

ビームフォーミングは、センサーアレイによって捕捉された複数のマイク信号から、特定の方向からの音を強調し、他の方向からのノイズや不要な信号を抑制するデジタル信号処理技術です。

まるで光学レンズが光線を一点に収束させるように、音響エネルギーを特定の空間方向へと「焦点」を合わせる役割を担います。

音源からの音の到来方向(Direction of Arrival, DoA)を極めて高い精度で推定し、同時にその音源の強度(音圧レベルやパワー)を定量的に評価します。

DoAΘ

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